ラベル 食中毒事件の背景 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 食中毒事件の背景 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2012年6月20日水曜日

法務省関係施設でのウェルシュ菌食中毒の連続発生


先日、厚労省から注意喚起の通知分が来ていたがこの時期になっても事故が発生しているので以下のような連続 tweet をしました。
過去に発生した類似3施設の事件を研究した上でのアピールです。

集団食中毒:神戸拘置所で53人下痢や腹痛 http://mainichi.jp/select/news/20120621k0000m040052000c.html

◇またもウェルシュ菌。煮物を加熱後、熱いまま2時間以上置くと危険ということを覚えておくこと!!
◇ウェルシュ菌は45℃10分で倍になる。条件が良ければ7分台で2倍になる。ものすごい増殖スピード。
◇ひき肉が入った料理、鶏肉が入ったものの大量調理が原因となりやすい。煮物も炒めものも!
◇暖かいものを食べさせようという親切心がウェルシュ菌食中毒の元。関係者はこの言葉が分かる筈。冷たい飯では事故にならないのだが…。
◇暖かいものを食べさせたいなら、必ず保管時の食べ物の温度確認を!60℃以下は不可。必ず加温しておくこと!

2011年2月12日土曜日

昨夏の記録的な猛暑で8月の食中毒発生件数は?

 夏の暑さと食中毒発生件数はあまり関係ないことが裏付けられました。
 2010年8月から9月にかけて記録的な猛暑でした。
 従来、梅雨時から夏場にかけて伝染病が蔓延しやすく、食中毒も起こりやすいというのが一般の常識でしたが、近年のノロウイルスの大流行で冬場こそ食中毒予防の主戦場であるとの認識は徐々に共有されてきたことと思います。
 私の近辺では、猛暑とともに腸管出血性大腸菌の流行がありました。古来からの言い伝えがいまだ通用するのかと驚き、9月下旬と10月に記事を書き、私のアーカイブでフォローしてきました。
 今年の冬は一転して記録的な大雪とかで、大阪も昨日は自宅の窓からも公園に積もった雪を見ることができました。(そうです。私は寒そうな外へ出る勇気もなく、部屋にこもっていました。)
 この時期になりますと、全国の自治体から昨年分の食中毒報告書が厚労省に届けられ、食中毒統計の昨年分の概要がまとまりかけます。私の近辺の保健所でもまだ未報告があるという話を聞きます。昨年12月分はまだこれからの自治体がたくさんあると思いますが、平成22年8月分はデータがほとんどそろっているだろうと思い、欠けていた22年分のデータを入れて見ました。
上のグラフからは、直近の3年間は温度変化と同じような動きをしていますが、もっと広いスパンで見ると全く相関がなさそうです。
 詳しくは私のアーカイブをご覧ください。
 資料23 記録的猛暑で食中毒は増えたか?
 http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/mousyo_2010.html

補足1:一抹の不安があり、今、厚労省の平成22年食中毒発生事例(速報)を見てみました。ちなみに大阪市さんは平成22年総計26件の筈が全て未提出じゃないですか(怒)(大阪市のみ名前を出しました。他にもあるかもしれませんが思いつかずすみません。)
まだ数字が動きますので途中経過ということで…。
補足2:大阪府の食の安全推進課が発表している事件数は大阪市を含む府下全域分で、患者数はまだ変動しますが事件数はほぼ確定数に近いと思います。
厚労省データの都道府県名(大阪府+堺市+高槻市+東大阪市(0件))が府のホームページの数字になります。興味がおありの方は21年事例と比較してください。

2010年10月5日火曜日

記録的猛暑で食中毒は増えたか?

 先日、大阪府の食中毒発生状況(速報)が更新されましたので私のアーカイブに「記録的猛暑で食中毒は増えたか?」と題して現時点でのこの夏の状況をまとめてみました。
 食中毒の発生は「平均気温」や「熱帯夜」の日数だけでは決まらないというのが結論で、その時代状況というか公衆衛生上の食品衛生を巡る大きな流れにも左右されるようです。

 
 上のグラフは平成20年1月から平成22年8月までの大阪府における月別発生件数のグラフです。
このグラフからは、今年は発生件数が少なかったように見えますが、大阪府のみのデータでは事件数も少なく、平成22年8月が例年に比べ食中毒の発生が多かったとか少なかったとは言えないようです。
 そこで、厚労省の食中毒統計などを利用し、次の資料を作成し「食品衛生なんでも相談室」のアーカイブにアップしました。
 「資料23 記録的猛暑で食中毒は増えたか?」
   http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/mousyo_2010.html

 上記資料には、平成13年から平成21年までの大阪市の平均気温と同時期に全国で発生した食中毒の発生件数を併せたグラフも作成しています。このグラフからは興味深い傾向がみられますが、この謎解きのための、原因別発生状況のグラフも併せてお示ししています。

2010年6月8日火曜日

学校給食において発生した食中毒事例集

行政刷新会議の独立行政法人に対する事業仕分けで日本スポーツ振興センターが実施している学校給食の安全対策事業を「保健所に任せる」と仕分けされました。
確かに、事業内容は私たちが行っていることと重複していることは否めませんが、その成果物は保健所でも大いに利用させていただいています。

学校給食に対しては文科省が「学校給食衛生管理の基準」を作成し都道府県あて通知しているところです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08071616.htm

このため、集団給食施設のなかでも厳しい自主管理体制となっています。学校給食での食中毒事件は滅多に発生しないため保健所単位で考えるとまず経験することができません。万一食中毒事件に遭遇しても保健所単独で詳しく原因を追求することは人的資源の面でも困難があると思います。そのようなわけで、厚労省がとりまとめを行えば別ですが日本スポーツ振興センターが事故事例を掘り下げてくれるのは大いに参考になっています。

本日は、同センターの出版物の紹介です。

昨年は「平成20年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書」が発行されていました。
http://naash.go.jp/anzen/school_lunch/%E5%88%8A%E8%A1%8C%E7%89%A9//tabid/852/Default.aspx

先日、「学校給食において発生した食中毒事例集」が発行されました。
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/anzen_school/tabid/1193/Default.aspx

書籍は有料ですが、いずれもpdf形式で無料でダウンロードできます。
失敗学の観点でみると大変有意義な本と思います。

2014/01/26 補足

平成24年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/Tabid/1266/Default.aspx

2009年9月13日日曜日

成型肉 潜むO157 「中までよく焼いて」

タイトルの記事が朝日新聞、9月12日の夕刊(大阪版)に出ました。驚いたことに1面扱いです。


 今回の事件の本質がよくまとめられて、消費者に注意を促している良い記事だと思います。
 見落とされた方は、次の asahi.com に出ています。
 http://www.asahi.com/national/update/0912/TKY200909120113.html





 この記事の続きには、別のステーキの事件もでています。こちらは成型肉ではなくカット肉の「角切りステーキ」です。角切りステーキは食べやすいし、値段もリーゾナブルなのですが、食監的には小さいサイコロ状の6面の全てを焼き中心部まで火を通すというのは、根気がいって難しいですね。蓋でもして蒸し焼きにするとよく火が通りますが、私の経験によると安物の成型肉は味も抜けてしまって、ただのミンチ肉になってしまいました。

 筋切りしたり、タンブリング処理(調味液を機械的に浸透)した肉は食べやすく美味しいと思うのですが、よく焼いて食べないといけないということですね。

2009年7月30日木曜日

予測微生物学の成果を試す

 財団法人食品産業センターのHACCP関連情報検索システムに「予測微生物モデル」というのがある。
 http://www.shokusan.or.jp/haccp/yosoku/1_1_yosoku.html

 ブドウ球菌食中毒事件に関連して試用したという情報を聞き、理論のことはよく分からないが私も試してみた。
 エクセルのバージョンが合わないのか、画面解像度の設定が悪いのか、表示された画面は少し見づらかったが、なんとなくグラフ化することができた。
 設定条件として保存食の検査結果から、喫食2時間前で菌数が10の6乗程度。保存温度は調理場の室温に近い35℃程度で3時間程を考えてみた。
 結果は次のような感じとなる。



 感じとしてはラグタイム2時間は長すぎ、現実の食中毒事件では直ちに対数増殖期にはいるのではと思われることから、0時間とし、初発菌数を手荒れの素手で直掴みと考え多めに取ると納得のいくグラフとなっている。

 黄色ブドウ球菌食中毒が発生するには、やはり、汚染後5時間以上経って喫食というのが相場だねと再び納得してしまった。

2009年7月17日金曜日

人件費を押さえたために

 「人件費カットに由来する不自然な勤務時間」を感じたことがあった。3食提供の現場で、調理師が早朝6時から午後3時までの勤務となっている。これでは、夕食を早く仕上げることになる。そうすると、加熱調理された料理は、盛り付け時まで長時間保管さることになる。

 加熱調理後に細菌汚染があると、菌量は1万倍くらいになる可能性があり危険きわまりない。しかし、通常、このことによって事故が発生する確率は個人レベルの目では無視できるくらい低いため、つい横着してしまうことになる。

 現場では事故に遭遇し、「何時もと同じで、何か失敗した覚えは無いのに何故?」ということになってしまう。
 経営者としては痛い目にあってはじめて反省することなのだろう。

2009年7月16日木曜日

カンピロ食中毒原因施設の営業者の言葉を聞いて思うこと

 「新鮮な肉なら大丈夫だと思ってました」「10年以上、生を提供しているけど何ともなかったのに」という声にはPR不足を反省。 

 「鶏肉販売店から生での提供は危ないよと聞いていたけど、まさか自分のところがだすとは思ってなかった」とは、つい最近あった原因施設。PRが行き届きつつあることには安堵するが、事件が起きてしまっては落胆。

 肉の生食の危険性については、例年PRしているが、「私は宝くじには当たるかもしれないけど、飛行機事故には会わないと思う」という心理に共通しているものを感じる。

 それぞれのお店は生食を提供することを除けば衛生管理にも気をつけているのに残念である。

2009年7月15日水曜日

宮仕えの悲哀

 居酒屋で連続してカンピロバクターによる食中毒が発生した。この不景気の中、サラリーマンの給料は抑えられ、高価なお店で親睦会をというわけ にも行かない。比較的安価ですむ焼き鳥をベースにした居酒屋が利用されることになる。このところ、お客も焼肉店から焼き鳥店へシフトしているようだ。

 この不況下、大メーカーには子会社や下請け会社の社員、派遣の社員が机を接して仕事をしているケースもあるようで、これが中毒調査を難しくする。

 下請けとしては、親会社の社内を下請けが起こした不祥事で保健所職員がうろつくようなことがあれば、親会社に新型インフルエンザでも発生したかと出入りの業界関係者に誤解され風評被害を招くかも分からないと心配する。

 そうなると、調査実施のために社内協議がおこなわれ、保健所に対し、時間外とか別の場所での面接調査などの要望が寄せられることになる。保健所では、患者側の回答待ちのま ま、無為に時間だけは過ぎる。その間、原因施設側に患者側の情報を伝え原因食品を絞り込むこともできない。情報の探知から事件の概要が判明するまでに信じられない 時間がかかることになる。

調理師と栄養士のせめぎあいを思う

 集団給食の調理現場にも会社やお客から美味しいもの、見栄えの良いものが要求される。料理の美しさ・美味しさと衛生とは相反することも多い。

 和食では煮物に味をしみさせるため、煮汁につけたまま冷ます。この行為がウエルシュ菌食中毒の原因となるおそれがあるので、加熱後の急冷を指導しているが、和食の調理師さんにはなかなか徹底できない。

 食中毒事例のなかに、下ごしらえし、冷蔵していた野菜を煮立った煮汁にブドウ球菌に汚染された素手で入れ、素材の色を残すため、充分加熱しないで火を止めて保管したためブドウ球菌を増殖させたと推測されるケースもあった。

 また、再加熱を必要とされる場合も煮くずれを気にして充分な加熱がなされているか疑問だ。このあたりの衛生管理は管理栄養士さんの任務の一つかとも思うが、職場内の力関係では、とても口出しできる状況でないところもあると思う。

2009年7月14日火曜日

事故の後は自己保身

 食中毒事件の後、調理従事者の検便を行うとしばしば患者と同じ原因菌が検出されることがある。事情を聞いても調理従事者はずっと健康で症状を呈していなかったということになる。でも、それが怪しい。下痢気味の時はトイレで手を汚しやすい。が、健常便のときも同じように頻繁に手を汚すでしょうか?便中の菌数は下痢のときと同じほど多いでしょうか?

 また、調理法を問うと「唐揚げをあげた時の加熱は中心が75度で1分間加熱を確認しました」という模範的な回答が返ってきます。どんなに忙しい時も暇なときと同じように作業出来ているでしょうか?

 以前、薬味に使った野菜による事件の際、一つの現場でのみ患者発生が見られず、薬味野菜を加熱したと推察されるのに、「マニュアルどおり生で提供しました」と頑として答えが変わらぬこともあった。

 このように、事件後の聞き取りは正直に答えてくれることが多いとは思うが、嘘発見器を使用して聞き取りを行うわけではない。 「人は自己保身に走る」ということを念頭に置き、調査報告書を読む必要もある。少し脱線してしまった。