2009年8月30日日曜日

食品衛生監視員研修会に参加する

 先日、兵庫県民会館で行われた「近畿食品衛生監視員研修会」に参加した。特別講演として、丸本敏久氏の「時代が求めるメンタルコミュニケーション - 笑顔のメンタ ルコミュニケーション -」、吉岡昭彦氏の「従来の疫学的手法で解明できない事例のための新たな調査手法の検討」の2題。併せて27題の研究発表が行われた。

 コミュニケーションの話は「オイ!コラ!」で話をすませていた時代なら問題なかったであろうが、回収命令よりも自主回収がメインとなってきた近年は、相手の『気づき』による自発的なアクションが要求されるようになっている。私的には「主要価値類似性」にも通じるのかなと思う。 原因不明の食中毒事件(有症苦情事例)は私も何度か係わったことがある。今思うと、食中毒の原因としてノロウイルスが追加される前は秋から春にかけての有症苦情事例はほとんどがノロウイルスであったようだ。ノロウイルスや黄色ブドウ球菌が否定されながら原因物質不明となった近年の事例としては、きのこ関連、会食関連を思い出す。 事件を探知し調査の結果、食事(食品)は推定できても検査の結果、何も出てこない場合はグループ内での感染症か食中毒か判断できないことがある。今回の話は全国的に網をはって、推定原因食品の残品を確保し原因物質を特定したいということかと私なりに理解した。

 研究発表は忙しい業務の合間を縫っての発表なだけに、各題とも各組織の様子が窺われ興味深かった。保健所によっては過去数年間食中毒を経験していないという話を聞いたりすると毎月食中毒事件の処理をしている身辺に較べその違いに今更ながら驚くが、若手の方が発表しているのを見ると団塊の世代が退場したのを感じる。

 以下に、私がとくに参考になったと思った発表をあげる。
「米飯によるセレウス菌食中毒事例について」[大阪府]、「バイキング形態で提供を行っている飲食店における衛生管理状況について」[京都市]、「製造現場等におけるシラス中の過酸化水素簡易測定法について」[和歌山県]、「営業許可施設内における「ジクロルボス蒸散剤」の使用実態と安全対策について」[奈良県]、「活スッポンのサルモネラ汚染実態とその食中毒予防について」[大阪府]、「会席料理で頻発した有症苦情事例の疫学的再検討について」[京都府]

2009年8月4日火曜日

食品衛生法と細菌基準

 「食品衛生なんでも相談室」では、アクセス解析を行い、皆さんの疑問点の確認なども行っています。

 過去ログのヒット件数でこの頃目立つは、模擬店落下細菌の基準、自宅カフェや特定の食品の細菌検査、紫外線殺菌などです。
 疑問点について、新たに相談して頂くと、どなたかから的確な回答が寄せられますが、時間的な余裕も無いためか素通りされる方も多いように感じています。

 という訳で、細菌の基準や衛生規範などについて検索される時のヒントになれば幸いと思い書いてみました。

◎ 『コープさっぽろ 』 安全・安心への取り組み 6つの自主基準 微生物基準 - 出荷時点基準(新規取扱い商品に適用)は参考になります。
http://www.coop-sapporo.or.jp/contents/view/id/154
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  追補 2012/08/19 『コープさっぽろ』は現在閲覧できません。
  『エフコープ取り扱い商品管理基準』を参照ください。
  http://www.fcoop.or.jp/goods/kijun/

◎ 法的裏付けを知りたい方へ
 食品の細菌に関する基準については食品衛生法や衛生規範により決められています。
  これは、厚生労働省の「法令等データベースサービス」で確認することができます。
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  追補 09/09/08 個別の食品の規格基準について見やすく整理しました。
  ここをクリック ==>  資料21 「食品、添加物等の規格基準」のアウトライン
      http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/kokuji/outline.html
  追補 11/01/24 衛生規範については茨城県のサイトが便利です。
  http://www.shoku.pref.ibaraki.jp/kanren_jigyosha/eisei/eisei09.html
  追補 2012/10/26 漬物の衛生規範の改正等について
  http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002lt6o-att/2r9852000002ltab.pdf


 

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A 食品衛生法で成分規格(細菌規格)が定められているもの
  「食品、添加物等の規格基準 厚生省告示第370号」に記載されているが、現在の処、希望する食品にたどり着くのは困難。
  清涼飲料水,氷菓,食肉製品,冷凍食品,生食用かき、生食用魚介類 等が規定されている。
   ====> 法令検索へ
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2009年8月2日日曜日

腸炎ビブリオ食中毒が影をひそめる

 喜ばしいことに、このところ、腸炎ビブリオ食中毒の声をあまり聞かない。私たちの大阪府では、昨年今年と腸炎ビブリオ食中毒の届け出はない。

念のため、厚生労働省の食中毒事件速報で確認すると、
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/10hassei/xls/H20joukyou.xls

平成20年中に17件、患者168名とある。

感染症情報センターの病原微生物検出情報
http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html

で確認すると、下図のとおり、2005~2007年にはある程度報告があるが、2008年、2009年と激減している。

 一時猛威をふるった腸炎ビブリオO3:K6型菌も交代期を迎えているようだ。

 食品安全情報  No. 6 / 2009 に
http://fcsi.nihs.go.jp/ex/webdocs/ex-01/2009_/foodinfo200906/foodinfo200906.pdf
「3.チリ南部における腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)アウトブレイクの疫学調査」
という記事があるが、「病原性関連遺伝子群が、世界的流行株からこの地域の貝類に生息している多様で変動性を有したバクテリア集団を構成する腸炎ビブリオグループのうちの1 つに水平伝播したことが示唆された。」とあり、新型インフルエンザが出現したのと同様に出番をうかがっているようだ。