2019年7月27日土曜日

カンピロバクターとノロウイルス食中毒事件数の推移(大阪府 2009年-2018年)

 大阪府食中毒発生状況速報(参考1)をみると、カンピロバクター食中毒の発生件数は平成26年、27年と急激に増加し平成28年になる増加は鈍りました。平成29年は減少しましたが、平成30年には元に戻りました。

 ノロウイルスによる食中毒は平成18年のように突然ピークが現れ、その後漸減するパターンを繰り返します。平成30年は平成27年のピークから漸減3年目になります。

 過去の食中毒発生件数をみると、発生件数に社会的事件との関連があることも分かります。 

 平成21年(2009年)は新型インフルエンザが発生し、手洗いの励行など衛生に関する意識が高まった年です。カンピロバクターによる食中毒事件数は全国的に減少しました。 
 平成23年(2011年)は4月~5月に発生した焼肉チェーン店で喫食したユッケによる腸管出血性大腸菌O-111食中毒での5名死亡事件により、9月に生食用食肉の規格基準制定されました。
 平成24年には牛のレバーの生食食用としての提供が禁止になり、肉の生食を避ける空気も生じ、カンピロバクターによる食中毒は激減しました。しかし、消費者の肉の生食嗜好は鶏肉に集中し、平成25年(2013年)には鶏肉を生で提供する飲食店が増加するとともにカンピロバクターによる食中毒の発生件数も増加したと考えています。
 平成28年になると、鶏肉の生食が一般的になったようです。食べたい人はいつも食べている状態になり、平成29年になると肉の生食により一般の方のほとんどがカンピロバクターに対する免疫を獲得し、そのため食中毒発生件数が減少してきたと考えることもできると思われます。またこの年は、大阪府が肉の生食撲滅に監視を強化した年でもあります。
 私の感覚としては、① 日本では、毎年一人当たり1回はカンピロバクター食中毒に罹患していると推測されるという報告がること。② ノロウイルスへの免疫が3か月程度保持されることから、カンピロバクターも同様に免疫が弱くなり、集団の免疫が弱くなると事件が多発するということかなと考えています。

☆ 食中毒の発生状況(大阪府食の安全推進課ホームページ)
  http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/shokutyuudoku/#hassei

魚の寄生虫クドアとアニサキス食中毒の推移(大阪府 2009年-2018年)

 ヒラメの寄生虫クドア・セプテンプンクタータ(クドアと略します)は平成24年から平成26年にかけて流行を見ましたが、国内での養殖魚の対策が行きわたったようで激減しています。
 一方、サバやサンマ、カツオ等の寄生虫であるアニサキスは全国的な傾向ですが食中毒としての届け出数が増えています。大阪府でも以前に比べると増加しています。

☆ 食中毒の発生状況(大阪府食の安全推進課ホームページ)
  http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/shokutyuudoku/#hassei

2018年2月11日日曜日

魚の寄生虫クドアは減少、アニサキスは増加の傾向(大阪府 平成29年の食中毒)

 ヒラメの寄生虫クドア・セプテンプンクタータ(クドアと略します)は平成24年から平成26年にかけて流行を見ましたが、国内での対策が行きわたったようで
大阪府では平成27年からは年間1件の発生にとどまっています。
 一方、サバやサンマ等の寄生虫であるアニサキスは全国的な傾向ですが食中毒としての届け出数が増えており、大阪府でも年々増加の傾向にあります。



資料

☆ 食中毒の発生状況(大阪府食の安全推進課ホームページ)
  http://www.pref.osaka.lg.jp/shokuhin/shokutyuudoku/#hassei

☆ クドアによる食中毒について |厚生労働省
  http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000133250.html

☆ アニサキスによる食中毒を予防しましょう|厚生労働省
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

補足(2018/02/16)
☆ 杉山 広(国立感染症研究所寄生動物部) 食中毒としての食品媒介寄生虫症: 現状と検査の課題 日本食品微生物学会雑誌 Jpn. J. Food Microbiol., 33(3), 134‒137, 2016

☆ ヒラメの粘液胞子虫(クドア)と馬肉の住肉胞子虫(サルコシスティス) - 生食用生鮮食品を共通食とする、これまで原因不明とされていた寄生虫による食中毒について -


2018年2月9日金曜日

ノロ、カンピロともに減少に転じる(大阪府 平成29年の食中毒)

 ノロウイルスは遺伝子組換えが頻繁に起き、新しい亜型の出現が周期的な大流行をもたらしています。
 ノロウイルスは平成27年に流行を見ましたが、平成29年にかけて減少を続けています。
 カンピロバクター・ジェジュニ/コリは、平成24年に激減を見た後全国的に増加を続けています。
 大阪府のカンピロバクター・ジェジュニ/コリの食中毒事件数は平成27年を頂点として頭打ちとなり、平成29年には減少に転じています。

参考:
☆ 集団胃腸炎事例からのノロウイルスGII.P16-GII.4 Sydney_2012の検出―大阪市(IASR Vol. 37 p. 136-138: 2016年7月号)
☆ 食中毒の発生状況(大阪府食の安全推進課ホームページ)

2015年3月3日火曜日

カンピロバクター食中毒が増加(平成26年の食中毒)

平成26年は7月に発生した静岡市の冷やしキュウリによる腸管出血性大腸菌(O157)が記憶される年だった。
先ごろ、平成26年の大阪府食中毒速報が確定したので平成26年の大阪府の食中毒事件について調べた。
食中毒の発生件数をみるとノロウイルスは平成24年をピークとして減少を続け、件数、患者数ともカンピロバクターと逆転した。
次の図は過去5年間の件数の推移である。

私のArchiveにもう少し詳しくデータを示し、全国のデータも示した。
資料34 カンピロバクターの逆襲 - <大阪府食中毒速報に見る平成26年に発生した食中毒の特徴>