2009年7月30日木曜日

予測微生物学の成果を試す

 財団法人食品産業センターのHACCP関連情報検索システムに「予測微生物モデル」というのがある。
 http://www.shokusan.or.jp/haccp/yosoku/1_1_yosoku.html

 ブドウ球菌食中毒事件に関連して試用したという情報を聞き、理論のことはよく分からないが私も試してみた。
 エクセルのバージョンが合わないのか、画面解像度の設定が悪いのか、表示された画面は少し見づらかったが、なんとなくグラフ化することができた。
 設定条件として保存食の検査結果から、喫食2時間前で菌数が10の6乗程度。保存温度は調理場の室温に近い35℃程度で3時間程を考えてみた。
 結果は次のような感じとなる。



 感じとしてはラグタイム2時間は長すぎ、現実の食中毒事件では直ちに対数増殖期にはいるのではと思われることから、0時間とし、初発菌数を手荒れの素手で直掴みと考え多めに取ると納得のいくグラフとなっている。

 黄色ブドウ球菌食中毒が発生するには、やはり、汚染後5時間以上経って喫食というのが相場だねと再び納得してしまった。

2009年7月25日土曜日

ブログ「食監のコーヒーを飲みながら」

 ネットサーフィンをしていてタイトルのブログを発見した。
 気に入ったので早速、「食品衛生なんでも相談室」のリンク集に収載することにした。
 「食品衛生監視員の本音を気楽に語る場所です」とあるように、ブログの作成者が本音で語る内容は、同じ業界人としても面白い。団塊世代の大量退職など、なるほど、どこも同じかなと思う。

 「食監のコーヒーを飲みながら」
 http://syokkan-coffee.cocolog-nifty.com/blog/

2009年7月22日水曜日

「食監の隠れ里」が Document not found に

 先日から名主様の「食監の隠れ里」が見れなくなっています。ご多忙らしく、最近更新がないので気にはなっていたのですが…。

 名主様の「とうざ日記」の方はつながります。
 http://blogs.dion.ne.jp/touzadiary/

「X-ふぁいる」も再発見しました。
 http://www.h5.dion.ne.jp/~kakure/xfile/xfile_001.htm

2009年7月21日火曜日

昨年はヒスタミン食中毒の当たり年だった

 厚生省の食中毒発生事例からヒスタミン食中毒の経年変化を調べてみたところ、次のグラフのような結果となった。



2007年に谷間があるが、この年は、中国や韓国が高値で魚を買いあさると言うことで、マグロ不足が喧伝された年にあたる。昨年はリーマンショックの年。このあたりに何か関係があるのだろうか。

また、ヒスタミン食中毒の原因となった魚種別経年変化をアーカイブに収録したが、昨年のマグロ関係でのヒスタミン食中毒の多発について情報をおもちの方は教えて欲しい。

資料 15 ヒスタミンによる食中毒事例(魚種別年次変化) 2000年~2008年
http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/histamine.html

2009年7月19日日曜日

ヒスタミンによる食中毒事例を勉強

 集団給食施設でのヒスタミン中毒は、冷凍食品を使用することが多く、季節性はあまり無いと思っていたが自分で集計してみて、完全な夏型であることが分かった。
 下図で分かるように、8月に谷がある。これは学校給食が夏休みになるせいであろうか。















追補(2011/2/6):ヒスタミン食中毒について原因や予防法をまとめてみました。
 資料 15 ヒスタミンによる食中毒事例(魚種別年次変化) 2000年~2009年
 http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/histamine.html (最終更新:2010/12/11)

2009年7月17日金曜日

人件費を押さえたために

 「人件費カットに由来する不自然な勤務時間」を感じたことがあった。3食提供の現場で、調理師が早朝6時から午後3時までの勤務となっている。これでは、夕食を早く仕上げることになる。そうすると、加熱調理された料理は、盛り付け時まで長時間保管さることになる。

 加熱調理後に細菌汚染があると、菌量は1万倍くらいになる可能性があり危険きわまりない。しかし、通常、このことによって事故が発生する確率は個人レベルの目では無視できるくらい低いため、つい横着してしまうことになる。

 現場では事故に遭遇し、「何時もと同じで、何か失敗した覚えは無いのに何故?」ということになってしまう。
 経営者としては痛い目にあってはじめて反省することなのだろう。

2009年7月16日木曜日

カンピロ食中毒原因施設の営業者の言葉を聞いて思うこと

 「新鮮な肉なら大丈夫だと思ってました」「10年以上、生を提供しているけど何ともなかったのに」という声にはPR不足を反省。 

 「鶏肉販売店から生での提供は危ないよと聞いていたけど、まさか自分のところがだすとは思ってなかった」とは、つい最近あった原因施設。PRが行き届きつつあることには安堵するが、事件が起きてしまっては落胆。

 肉の生食の危険性については、例年PRしているが、「私は宝くじには当たるかもしれないけど、飛行機事故には会わないと思う」という心理に共通しているものを感じる。

 それぞれのお店は生食を提供することを除けば衛生管理にも気をつけているのに残念である。

2009年7月15日水曜日

宮仕えの悲哀

 居酒屋で連続してカンピロバクターによる食中毒が発生した。この不景気の中、サラリーマンの給料は抑えられ、高価なお店で親睦会をというわけ にも行かない。比較的安価ですむ焼き鳥をベースにした居酒屋が利用されることになる。このところ、お客も焼肉店から焼き鳥店へシフトしているようだ。

 この不況下、大メーカーには子会社や下請け会社の社員、派遣の社員が机を接して仕事をしているケースもあるようで、これが中毒調査を難しくする。

 下請けとしては、親会社の社内を下請けが起こした不祥事で保健所職員がうろつくようなことがあれば、親会社に新型インフルエンザでも発生したかと出入りの業界関係者に誤解され風評被害を招くかも分からないと心配する。

 そうなると、調査実施のために社内協議がおこなわれ、保健所に対し、時間外とか別の場所での面接調査などの要望が寄せられることになる。保健所では、患者側の回答待ちのま ま、無為に時間だけは過ぎる。その間、原因施設側に患者側の情報を伝え原因食品を絞り込むこともできない。情報の探知から事件の概要が判明するまでに信じられない 時間がかかることになる。

調理師と栄養士のせめぎあいを思う

 集団給食の調理現場にも会社やお客から美味しいもの、見栄えの良いものが要求される。料理の美しさ・美味しさと衛生とは相反することも多い。

 和食では煮物に味をしみさせるため、煮汁につけたまま冷ます。この行為がウエルシュ菌食中毒の原因となるおそれがあるので、加熱後の急冷を指導しているが、和食の調理師さんにはなかなか徹底できない。

 食中毒事例のなかに、下ごしらえし、冷蔵していた野菜を煮立った煮汁にブドウ球菌に汚染された素手で入れ、素材の色を残すため、充分加熱しないで火を止めて保管したためブドウ球菌を増殖させたと推測されるケースもあった。

 また、再加熱を必要とされる場合も煮くずれを気にして充分な加熱がなされているか疑問だ。このあたりの衛生管理は管理栄養士さんの任務の一つかとも思うが、職場内の力関係では、とても口出しできる状況でないところもあると思う。

2009年7月14日火曜日

事故の後は自己保身

 食中毒事件の後、調理従事者の検便を行うとしばしば患者と同じ原因菌が検出されることがある。事情を聞いても調理従事者はずっと健康で症状を呈していなかったということになる。でも、それが怪しい。下痢気味の時はトイレで手を汚しやすい。が、健常便のときも同じように頻繁に手を汚すでしょうか?便中の菌数は下痢のときと同じほど多いでしょうか?

 また、調理法を問うと「唐揚げをあげた時の加熱は中心が75度で1分間加熱を確認しました」という模範的な回答が返ってきます。どんなに忙しい時も暇なときと同じように作業出来ているでしょうか?

 以前、薬味に使った野菜による事件の際、一つの現場でのみ患者発生が見られず、薬味野菜を加熱したと推察されるのに、「マニュアルどおり生で提供しました」と頑として答えが変わらぬこともあった。

 このように、事件後の聞き取りは正直に答えてくれることが多いとは思うが、嘘発見器を使用して聞き取りを行うわけではない。 「人は自己保身に走る」ということを念頭に置き、調査報告書を読む必要もある。少し脱線してしまった。