2010年12月6日月曜日

病原微生物検出情報 11月号の特集はノロウイルスの流行 「2006/07~2009/10シーズン」

「病原微生物検出情報」 11月号の特集はノロウイルスの流行 「2006/07~2009/10シーズン」です。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/369/inx369-j.html
この記事については既に11月25日の私のコメントで紹介しましたが、検索サイトで「ノロウイルス」を検索してもこの記事にはなかなか到達しないようなので再度紹介します。

•ノロウイルスGII/4の2008a亜株の動向とイムノクロマト法の改良
•掃除機内ダストにおけるノロウイルスおよびサポウイルス汚染実態調査
•ノロウイルス陽性となった調理従事者の陰性確認検査―東京都
•2009~2010年に静岡県で発生したノロウイルス集団胃腸炎事例について
•夏季に結婚式場で発生したノロウイルスによる集団胃腸炎事例―大阪市
•給食弁当を原因としたサポウイルスによる大規模食中毒事例―愛知県
•中華料理店で認められたサポウイルスによる食中毒事例―川崎市
•愛知県と川崎市の食中毒事例から検出されたサポウイルスGI/2の塩基配列の比較

2010年11月18日木曜日

各地で感染性胃腸炎警報 Googleリアルタイム検索にもその兆し

 大分のニュース「感染性胃腸炎「大流行の恐れ」 予防徹底を」

 冬場の感染性胃腸炎の主役はノロウイルス。国が「大流行の発生が疑われる」とする定点患者数が警報基準値(20人)を超えるところが出だした。警報を出したのは仙台市が11月11日、神奈川県が11月15日、大分県が11月17日。
 今年はノロウイルスによる食中毒が増えるかも…。身近にも集団感染の情報が…。ということで
 リアルタイム検索のアップデートでキーワードを「おう吐 下痢」として検索してみた。結果は次の通り。
 私が赤矢印でマークしているとおり10月後半あたりから増えてきているのが読み取れる。アップデートの実体はtwitterで、件数はその時期のニュースにも影響されるが、個々のつぶやきを聞いてみると、感染症などの定点観測にも利用できるとおもわれる。
  試みに私の Archive でフォローしている。

 ちなみに、大阪府の感染性胃腸炎の発生状況は下のグラフの通り。地域によっては感染性胃腸炎件数の増加が始まっていることがわかる。本格的ノロウイルスの季節到来。
 話は変わるが、食品衛生研究の11月号に浜松市保健所生活衛生課 高田さんらが調査した「調理従事者におけるノロウイルス保有率調査について」という演題抄録があり、保育園では他に比べて高い保有率を示し、保育園では調理業務とトイレ掃除等の用務を兼務していることが分かったとある。うなずける結論である。

 下図は大阪府立公衆衛生研究所ホームページから引用



2010年11月15日月曜日

ノロウイルス 遺伝子型 GII/2 の台頭かGⅡ/4型の変異株の登場か?

 本格的なノロウイルスのシーズンを迎え全国各地で発生情報をみるがいまのところ、昨年同様の発生状況のようであるが油断できない状況であることは間違いない。

 2006年末から爆発的な流行を見せた、GⅡ/4 2006b変異型はその勢いを弱めているようで、 GⅡ/2 へと主役が交代するかに見えたがGⅡ/4が巻き返しをはかっているようでもある。

病原微生物検出情報から次のようなグラフを作ってみた。

  
病原微生物検出情報:2010/11/11作成より
   詳しくは私のArchiveにいれてある。
ノロウイルス集団発生月別報告数 2005年9月~2010年3月

ノロウイルスには多数の遺伝子型がある。感染性胃腸炎患者さんの検体は各地の衛生研究所で検査され感染症情報センターに集められている。
参考までに大阪府立公衆衛生研究所での「大阪府全域におけるノロウイルス流行調査」で研究されているデータ表の一部を次に引用する。遺伝子型GⅡの複数の型が事件に係わっていることが分かる。

◆病原体詳細情報

検出病原体1月2月3月4月5月6月7月8月9月合計
Rotavirus group A13113020500070
Norovirus genogroup I0250000007
Norovirus genogroup II31242011126200106
 Norovirus GII NT1330110009
 Norovirus GII/10100000001
 Norovirus GII/266510000018
 Norovirus GII/31311002008
 Norovirus GII/42296910500061
 Norovirus GII/70010000001
 Norovirus GII/120100000001
 Norovirus GII/130020100003
 Norovirus GII/141120000004
 感染性胃腸炎患者さんから検出されたウイルスの検出情報(抄)
 (2010年11月15日) 

文献:
「大阪府全域におけるノロウイルス流行調査」研究
田村務(新潟県保健環境科学研究所ウイルス科)
  食中毒の原因とその検査法について Ⅱ ノロウイルスによる胃腸炎の流行とウイルスの変異

2010年11月3日水曜日

食品衛生資料集の目次 をわかりやすくしました

 「食品衛生なんでも相談室」の本体に使用していた無料サイトの isweb が終了したため有料のサイトへ引っ越ししました。これまでの isweb は無料なのに cgi が使えて便利だったのですが時代の流れでしょう。
 現在トップページに使わせてもらっている osaka.cool も先行きが分かりませんのでファイルを移転しました(ただし、古い方も当分の間生きています)。
 これに伴い、私の個人的な勉強のために作成している資料集の目次を利用者の便宜を考え若干分かりやすくしました。ご利用ください。

資料集
http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/archive.html 

☆ 記録的猛暑で食中毒は増えたか?
 平成22年の夏は近年まれに見る猛暑。この猛暑の夏を締めくくるため、過去のデータを調べてみました。

☆ 温度と時間の黄色ブドウ球菌の菌数及び毒素量に及ぼす影響の推測
 おにぎりによる黄色ブドウ球菌食中毒の危険性が保存時間と保存温度によってどのように増加するか推測してみました。

☆ カンピロバクター食中毒事例(年次変化) 1996年~2009年
 カンピロバクターによる食中毒は患者2人以上の事例で見ると増加傾向にあったが、2009年になり減少を示した。この減少は本物か?

☆ 「食品、添加物等の規格基準」のアウトライン
 厚労省告示「食品、添加物等の規格基準」は膨大でわかりにくいもの。この告示の構成の理解を助けるために作成しました。

☆ 食品別の「食品、添加物等の規格基準」
 ○清涼飲料水 ○食肉及び鯨肉 ○食鳥卵 ○食肉製品 ○ゆでだこ ○ゆでがに
 ○生食用鮮魚介類 ○生食用かき ○即席麺類 ○冷凍食品 ○容器包装詰め加圧加熱殺菌食品  など  

☆ 食品・器具等の重金属関係の規格や基準(抄)
 普段はあまり意識することのない重金属関係の規格や基準および通知文を抜き出してみました。食の安全を考える上での基本中の基本です。

☆ 模擬店、臨時出店に関する全国各地の保健所の指導状況
 自分たちの街で模擬店や臨時出店を出す時の手続き、届出用紙、開催上の注意点は?あなたに変わって、模擬店などのサイトを探しました。

☆ 模擬店などでの取り扱い品目の例 
 バザーや模擬店ではどのような食品が扱えるの?

☆ 模擬店や野外調理での食中毒事例
 模擬店やバザーではこんな事件が…。他山の石として事故回避を!

☆ 集団給食施設 病因物質別食中毒発生状況(平成17~19年)
 集団給食施設で発生した食中毒はノロウイルス、サルモネラ、ウエルシュ菌、…。

☆ 集団給食施設における食中毒の原因となったメニュー例と防止対策
 集団給食施設でのメニュー毎の事故防止のポイント。

2010年10月11日月曜日

再び、ギランバレー症候群とカンピロバクター食中毒との関連について

 ギランバレー症候群(GBS)の先行感染症としてカンピロバクター・ジェジュニ/コリが名指しされてからずいぶん経ったように思いますが、このことについては各自治体のリーフレットも控えめな表現が多く、もう一つ釈然としない思いがあります。
 カンピロバクター食中毒予防のために鶏肉等の生食自粛指導を行っているわけですが、今一度、情報を整理したいと思い  2009年6月に発表されました次の評価書の該当部分を読み直してみました。

 食品安全委員会  の 微生物・ウイルス評価書  鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ
http://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-tuuchi-campylobacter_k_n.pdf

評価書は全部で105ページもあるので、以下にギランバレー症候群(GBS)に関係する部分を抜き書きしてみました。

☆ カンピロバクター腸炎とGBS との関連

 英国において実施された症例対照研究では、対照群の2%にC. jejuni によって起こるカンピロバクター腸炎(以下、C. jejuni 腸炎)が認められたのに比較して、GBS 群では26%であったこと(参照 69)、オランダでの同様の研究では、対照群の11%に比較してGBS 群では32%と有意にC. jejuni 感染の頻度が高いことが報告されており(参照 70)、疫学統計の解析結果からC. jejuni 感染のGBS との関連が確立している。(参照 71)

☆ GBSの感受性集団

 1994 年までの40 年間にわたる35 の国・地域におけるGBS 発生率の人口調査では、十代後半の若者と高齢者で発生のピークが見られ、子供より成人の方が高い発生率であることを示しており、性別については男女比が1.25:1.0 で女性より男性の発生率が高いことを報告している。(参照 74)

☆ GBSの発生状況
 日本では、GBS の発生状況に関する報告システムが存在しないため、正確なGBS 発生数は把握できていないが、諸外国と同率の発生率と考えられており(参照 75)、年間480~4,800 人(中央値1,560 人)のGBS 患者が発生していると考えられる。

☆ GBS の先行感染症
 急性に発症する四肢筋力低下又は深部腱反射消失を主徴とするGBS では、神経症状発現の前に、感冒様症状や下痢などの先行感染症状が多くの症例で認められている。
 オランダにおける154 例の症例対象研究の結果、先行感染病原体として4つの病原体(C. jejuni 、Cytomegalovirus、 Epstein-Barr Virus 及びMycoplasma pneumoniae)が示され、そのうちC. jejuni が32%を占めていたことを報告している。(参照 76)
 なお、Haemophilus influenzae による呼吸器感染症も主要な先行感染症として近年注目されてきているところである。

☆ C. jejuni 腸炎からGBS への進展
 米国でのC. jejuni 腸炎とGBS の年間発症数をもとに、C. jejuni 腸炎1,058 人中1 人がGBS へ進展すると試算した報告(参照 77)がある。スウェーデンで行われた追跡調査では、C. jejuni 腸炎約3,000 人中1 人がGBS へ進展することを示した報告(参照 71)がある。

参照
(69) Rees J. H. ; Soudain S. E. ; Gregson N. E. ; Hughes A. C. . Campylobacter jejuni infection and Guillain-Barre’ syndrome. New England J. Medicine,1995, vol. 333, no.21, p. 1374-1379.

(70) Jacob B. C. ; van Doorn P. A. ; Schmitz P. I. M. ; Tio-Gillen A. P. ; Herbrink P. ; Visser L. H. et al. . Campylobacter jejuni infection and anti-GM1 antibodies in Guillain-Barre’ syndrome. Ann. Neurol. , 1996, vol. 40, p.181-187.

(71) 古賀道明,結城伸泰.Campylobacter jejuni 腸炎とギラン・バレー症候群.感染症学雑誌. 2003, vol. 77, no. 6, p. 418-422.

(74) Hughes R. A. C. ; Rees J. H. . Clinical and Epidemiologic Features ofGuillain-Barre´ Syndrome. J. Infectious Diseases, 1997, vol. 176(Suppl 2),S92-98.

(75) 国立感染症研究所:感染症情報センター.病原性微生物検出情報:感染症の話「カンピロバクター感染症」. IDWR. 2005, no. 19. http://idsc.nih.go.jp/

(76) Jacobs B. C. ; Rothbarth P. H. ; van der Meche’ F. G. A. ; Herbrink P. ;Schmitz P. I. M. ; de Klerk M. A. et al. . The spectrum of antecedent infections in Guillain-Barre’ syndrome. : A case-control study. Neurology,1998, vol. 51, p. 1110-1115.

(77) Allos. B. M. Association between Campylobacter Infection and Guillain-Barre´ Syndrome. J. Infectious Diseases, 1997, vol. 176(Suppl 2),p. S125–128.

2010年10月5日火曜日

記録的猛暑で食中毒は増えたか?

 先日、大阪府の食中毒発生状況(速報)が更新されましたので私のアーカイブに「記録的猛暑で食中毒は増えたか?」と題して現時点でのこの夏の状況をまとめてみました。
 食中毒の発生は「平均気温」や「熱帯夜」の日数だけでは決まらないというのが結論で、その時代状況というか公衆衛生上の食品衛生を巡る大きな流れにも左右されるようです。

 
 上のグラフは平成20年1月から平成22年8月までの大阪府における月別発生件数のグラフです。
このグラフからは、今年は発生件数が少なかったように見えますが、大阪府のみのデータでは事件数も少なく、平成22年8月が例年に比べ食中毒の発生が多かったとか少なかったとは言えないようです。
 そこで、厚労省の食中毒統計などを利用し、次の資料を作成し「食品衛生なんでも相談室」のアーカイブにアップしました。
 「資料23 記録的猛暑で食中毒は増えたか?」
   http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/mousyo_2010.html

 上記資料には、平成13年から平成21年までの大阪市の平均気温と同時期に全国で発生した食中毒の発生件数を併せたグラフも作成しています。このグラフからは興味深い傾向がみられますが、この謎解きのための、原因別発生状況のグラフも併せてお示ししています。

2010年9月26日日曜日

酷暑でカンピロバクター食中毒は抑制されたのか?

 お彼岸になりやっと涼しくなったが、大阪府ではこの9月にカンピロバクター食中毒で2件の飲食店(1件は焼き肉店での牛レバー刺身(推定)、1件は焼き鳥店での料理)とサルモネラ食中毒で1件の肉料理店が営業停止処分を受けた。
参照 大阪府 施設に対する行政処分等の情報

 カンピロバクターの発生ピークは春先と秋口であり、夏場に谷になると言われる。9月にカンピロバクター食中毒に2件も遭遇したことから、昨年のカンピロバクター食中毒発生件数の頭打ち傾向は本物か?酷暑の影響はあったのか?このあたりを確認すべく、今日は朝から厚労省の食中毒統計資料と格闘してみた。その結果、結論を出すには時期尚早との結論に達したが折角なので私のアーカイブに年次変化と年次・月別発生状況をアップした。こちらには、カンピロバクター食中毒統計の特異性についての補足を書いてみたので興味がおありの方は見て欲しい。

 資料22 カンピロバクター食中毒事例(年次変化) 1996年~2009年2010.09.26
                 http://www.shokuei.sakura.ne.jp/archive/Campylo/Campylo_2010.html


集計の結果、本日現在の状況は厚労省への報告時期にタイムラグがありよく分からないということになったが、月別発生件数は図2で分かるように確かに8月に谷間がある。

図2について補足
 本年4月以降の発生状況は、行政機関によっては未報告事例があるため少なめにカウントされている。実際の集計は7月分まで行ったがグラフでは5月までに留めた。3月までの報告の勢いでは昨年を超える可能性が高い。

2010年9月24日金曜日

猛暑と食中毒

 記録的な猛暑も雷雨とともに終わりを告げたみたいです。私の経験の範囲では夏が例年に比べ暑かったから食中毒の件数が増えたといったことはなかったように思いますが、今年は別でした。
 肉の生食が関係する事件で最終的に食中毒とはされなかったものの腸管出血性大腸菌感染症が例年になく多発しました。食中毒とはされなかったため、肉の生食の危険性を知らず自分の意志で食べた患者さんは泣き寝入りです。

 大阪府のホームページからもこの夏の腸管出血性大腸菌感染症の多発が確認できます。


腸管出血性大腸菌感染症発生状況


参照元

 大阪府報道発表資料
 http://www.pref.osaka.jp/hodo/index.php?site=fumin&pageId=4910


2010年6月8日火曜日

学校給食において発生した食中毒事例集

行政刷新会議の独立行政法人に対する事業仕分けで日本スポーツ振興センターが実施している学校給食の安全対策事業を「保健所に任せる」と仕分けされました。
確かに、事業内容は私たちが行っていることと重複していることは否めませんが、その成果物は保健所でも大いに利用させていただいています。

学校給食に対しては文科省が「学校給食衛生管理の基準」を作成し都道府県あて通知しているところです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/07/08071616.htm

このため、集団給食施設のなかでも厳しい自主管理体制となっています。学校給食での食中毒事件は滅多に発生しないため保健所単位で考えるとまず経験することができません。万一食中毒事件に遭遇しても保健所単独で詳しく原因を追求することは人的資源の面でも困難があると思います。そのようなわけで、厚労省がとりまとめを行えば別ですが日本スポーツ振興センターが事故事例を掘り下げてくれるのは大いに参考になっています。

本日は、同センターの出版物の紹介です。

昨年は「平成20年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書」が発行されていました。
http://naash.go.jp/anzen/school_lunch/%E5%88%8A%E8%A1%8C%E7%89%A9//tabid/852/Default.aspx

先日、「学校給食において発生した食中毒事例集」が発行されました。
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/anzen_school/tabid/1193/Default.aspx

書籍は有料ですが、いずれもpdf形式で無料でダウンロードできます。
失敗学の観点でみると大変有意義な本と思います。

2014/01/26 補足

平成24年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書
http://www.jpnsport.go.jp/anzen/Tabid/1266/Default.aspx

2010年3月27日土曜日

食の安全情報blog

しばらく冬眠しておりましたが、桜の季節になり、やっと目覚めてきました。

今回は ohira-y  さんの「食の安全情報blg」 を紹介します。
 http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/

3月16日の記事は 【 ■「FoodSsience」のサービス終了と「本棚の食卓」問題 】です。
毎回、食の安全に関し大事な情報を提供しておいでで、大変参考になります。
お気に入りに追加をお奨めします。